グロテスク

2004年2月16日 読書
ISBN:4163219501 単行本 桐野 夏生 文藝春秋 ¥1,905

はっきし言います

女性週刊誌とかでも絶賛されているように

文句なしの最高傑作です

ここまで何回も読み直したくなるような小説は初めてです

登場する主な人物は主人公と思われる「わたし」、その「わたし」の
妹で少女時代見る者全てを魅了するほどの怪物的な美貌を持ち、
生まれながらの淫乱症であるユリコ、一番になることにこだわり
一番を求めるあまりカルト宗教にのめりこんでしまい大量殺人の片棒
を担ぐことになるミツル、東電OL殺人事件をモチーフとしたような
昼は一流会社員で夜は娼婦、それで最期は殺されてしまうという和恵、
の4人の女性です。

この物語は「わたし」視点を中心にしてユリコや和恵視点の話とか
が淡々と語られていきます。はじめは「わたし」視点で読めるので
他の3人は最悪な奴やなって思いますが、実は「わたし」も最悪な
奴でした。で、他の人物がいい奴かって言えばそうでもなく、やっぱし
最悪な奴でした(笑)。感情移入して読むということはできないかも
しれません。でも、内容が実にリアルでおもろいんです。

例えば4人は初等部から大学まである学校で出会うわけなんですが、
そこでは初等部からきた人間が最上級の位で途中から入学してきた
人間はどんなに一生懸命頑張ってもその位になることができない、
という「生え抜き」至上主義の部分を描いていたり、中学までは
成績が一番でこの学校に入学できたが、そこには同じような連中が
集まっていて、今までは一番だったが高校では一番になれず努力では
勝てない才能というものを実感し、諦めたり、その才能の差を必死に
埋めようと一生懸命頑張るが、結局は報われないという結果になる者
が居るというところが実にリアルに描かれていました。

他にはユリコは若い頃は怪物的な美貌を持っていたが歳をとってそれが
衰えてしまい、最後には立ちんぼ(街に立って直引する娼婦)になった
時に和恵と出会い、和恵に開口一番「あなたブサイクになったわね。」
みたいなことを言われてしまったりします。でも、実は和恵の方が
醜くなっているのですが、和恵自身は自分は美人だと信じているだけ
なんです。こういうところってすっげぇリアルやなって思えます(笑)。

最期は俺好みの救いようのない終わり方をしてくれたり、人の心の闇
の部分だけをひたすら書き綴ったまさにグロテスク
な最高傑作でした。この本はもう文句なしに☆☆☆☆☆です。
できればもう一つ星をつけたいくらいです。

って、他人がここまで推薦する本って意外と読まんとこって思ったり
するんですよね(笑)。

コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索